美幌町実証実験住宅での研究
北見工業大学はカーボンニュートラルの実現に向けた研究に取り組んでいます。2024年3月には、その取組の一環として美幌町実証実験住宅を建設しました。美幌実証実験住宅では、『地域社会・経済の発展』と『地域の炭素資源の有効活用』の両立によりカーボンニュートラルを目指す『地域共生カーボンリサイクル』の実現を目標に様々な研究を進めています。これらの研究についてご紹介します。
現在、北見工業大学の4人の研究者が中心となって研究に取り組んでいます。
・機械電気系 教授 森田 慎一 氏
・機械電気系 准教授 植西 徹 氏
・機械電気系 准教授 髙橋 理音 氏
・機械電気系 特任准教授 松村 昌典 氏
地域の炭素資源をエネルギーへ変換
地域の炭素資源とは牛舎や温泉から回収するメタンや林業・農業の廃材などを指しています。これらの炭素資源を河川などの水源から得られる水と大気や住宅の煙突から回収される二酸化炭素と併せて、化学反応により変化させることにより燃料・アルコールなどを得ることができます。得られた燃料などは自動車で利用したり、住宅内での発電に利用することで、電気や熱が得られ、照明や冷暖房で利用したり、バッテリで貯めることができます。このシステムの要素技術や制御の高度化に関する研究を本住宅では実施しています。
(研究者:植西 徹 氏)
寒冷地でエアコン併用「床暖房」
夏は年々暑くなり、2023年の北海道の平均気温は過去最高記録を更新しました。北海道内の直近10年のエアコン普及率は20%から40%へ増加していて、エアコンが夏だけでは区冬の暖房にも一般に利用され始めています。
暖房の理想型は、柔らかく心地よい床暖房です。頭寒足熱だから体に優しく、冷え性の方やお年寄も快適ですし、床暖房機器不要なので広々使えてお掃除も楽々です。
しかし、暖まるまでに時間が必要なことや、光熱費が高くなってしまう問題があります。美幌実証実験住宅では、エアコンと床暖房の併用運転により、寒冷地において即暖と省エネを実現する最適運転方法を明らかにします。この研究は、人の暮らしの快適さと便利さを高めつつ、カーボンニュートラルを実現する成果を目指しています。
(研究者:森田 慎一 氏)
住宅屋根に設置する集風塔風車と風力発熱システムの開発研究
住宅での自然エネルギーの利用は、太陽光発電が普及しつつあります。しかし日本には、風状のよい地域も広く存在します。本研究は、住宅の屋根に設置するのに相応しい風車を新規に開発することを目的としています。さらにこの風車の動力で熱を作り、ボイラーの給水を予加熱することで、住宅の省エネ化に寄与することを目指しています。住宅用風車には、効率よりも安全性、静寂性および背の低さが要求されます。そこで本研究では、新たに集風塔風車を開発しました。美幌住宅では、複数の集風塔風車の実証実験を行い、最適な条件を明らかにします。
(研究者:松村 昌典 氏)
熱交換機能付き住宅換気システムに用いるサイクロン式給気フードの開発研究
現在の新築住宅では、良質な室内空気環境を維持するために、機械式24時間換気システムの設置が義務づけられています。さらに換気による熱損失を抑制し、住宅の省エネ化を促進するために、熱交換機能の付いた住宅換気システムが普及してきました。しかしこの換気システムの導入に当たっては、外気を浄化するフィルターのメンテナンス問題が発生しています。研究者らは、このメンテナンスコストを低減するために、外気からの塵埃を自動的に除去する機能を備えたサイクロン給気フードを開発し、特許を取得しました。民間企業は、本特許を用いてこれを製造・販売しています。本研究は、北見工業大学で開発されたサイクロン式給気フードの性能向上と小型化を目的として実施しています。
(研究者:松村 昌典 氏)
再生可能エネルギー電源利用を最大化する制御手法
化石燃料依存からの脱却を目指して、電力分野でも再生可能エネルギーの導入が進められていますが、今後は私たち住民生活ベースでも電力の再エネ化を図り、脱炭素社会に向けて取り組んでいくべき時代と言えます。
本研究では、商用電源との併用を前提とし、低コストかつ簡単な設備構成で再生可能エネルギー発電を最大化するシステムを開発します。良く使われる家電製品を実際に設置し、これらの使用状況と天候の状態に応じて商用電源と再エネ電源の選択パターンがどのようになるか記録を蓄積します。また、美幌実証実験住宅にはガスマイホーム発電「コレモ」が設置されており、ガスのみで電力と熱の供給が可能であることから、熱を多量に必要とする冬の北海道では特に効果的なシステムです。本研究では、商用電源の代わりにコレモを電力源とした際に、コレモの発電性能を引き出しながら再エネ電源利用を最大化する制御手法を開発します。
(研究者:髙橋 理音 氏)
実証実験住宅の場所
美幌町字東2条南5丁目7番地