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美幌町には1970(昭和45)年につくられた、北海道では最大の面積(93,976平方メートル)を持つ「ため池」があります。
そしてそこには、現在、たくさんの生きものたちが暮らしています。
美幌川より取水された冷たい水は、段差のついた温水ため池の上部から下部へと流れていくうちに、太陽の熱で温められ、用水路を伝って下流域の水田などをうるおします。
美幌に初めてトラクターが導入されたのは1952(昭和27)年です。北海道耕土改良機械導入事業によるもので、馬に代わる新しい力として期待されました。当時、馬で1日に耕せる面積は0.5ヘクタールほどでしたが、トラクターによって1日に23ヘクタールの面積を耕すことができるようになりました。
温水ため池は、建設後40年以上の歳月が経ち、現在は様々な生きものが暮らしています。なかには、北海道各地で絶滅が心配されているものもおり、ため池はそうした生きものにとっても大切な生息地になっています。
秋、足を踏み出せば、たくさんのトンボが飛び立ちます。その種類も数も美幌屈指で、ため池はトンボ達の楽園です。
これまでの調査では、40種以上のトンボの仲間が確認され、その多くは、ため池やその周辺で産卵・成長します。
また、ため池には湿地を好む魚が多く暮らします。なかでも、ヤチウグイはその代表です。ヤチウグイは、川の脇にあった沼などに暮らしていましたが、近年行われた開発でそのような生息地は失われてしまいました。そのため、ため池は、ヤチウグイにとって、本来の生息地に変わる大切な場所になっています。
同じく、カエルなどの両生類も、産卵の場としてため池を利用しています。
さらに、湿った場所を好み、水田によく見られるアズマツメクサなどの植物も失われゆく湿地環境の代替として、ため池を使っています。
こうしてみると温水ため池は、人が作り出した自然の中に多様な生きものが暮らす、里山のような環境といえるでしょう。
美幌峠は、霧や曇りの日が多く、強い風の吹きぬける厳しい環境です。そのため、標高500mほどにも関わらず、
ハクサンチドリなど、北海道の高山から亜高山で見られる植物が生息しています。平地にはない植物を気軽に観察
することができる、美幌の貴重な場所の一つです。
一方、美幌の市街地には、河川沿いや公園に自然林が残っており、4月~11月まで様々な花を見ることができます。
特に、フクジュソウやエゾエンゴサクは春を告げる花として親しまれています。
これらは、雪解け直後に花を咲かせ、初夏には姿を消してしまうので、スプリングエフェメラル(春の妖精)とよばれます。
北海道の林を代表する植物です。